SOHO支援町家「藤森寮」

使い方ひとつで夢の空間へ

ここは、元々、「藤ノ森寮」という学生アパートだったところだ。最近では、学生は、キッチンとユニットバス・トイレ付きのワンルームマンションに流れていってしまい、このように放置されている空きアパートや空き部屋が目立つようになった。
藤ノ森寮は、2003年3月いっぱいで最後の学生が巣立っていったのを最後に空き家になっていた。長い間、空き部屋への入居を募集していたのだが、誰一人 として応募がなく、最後の住人が去ってゆくという大家にとっては、ゆゆしき問題となっていた。
そんな中、いろんな業者が来ては、周囲の借家も壊してマンションを建てませんかと、話を持ちかけてきたそうだ。しかし、大家は基本的に町家や現在の風情が 好きだった。それが幸いして残ったおかげで、こうしてSOHO支援町家として生まれ変わることができたのである。
SOHOとは、以前にも説明したが、要するに家内工業的な小さなオフィスや職住一体の生活空間のことだ。SOHO支援町家として生まれ変わるにあたって、 「藤ノ森寮」から「藤森寮」と名前を変更した。別に大意はなかったのだが、同じく「ふじのもりりょう」と読む。
ここ藤森寮には、合計8テナントと町家倶楽部ネットワークの事務所が入っている。うまい具合に、同じような学生アパートが2軒あって、裏庭を隔ててL字型 にくっついていたものだから、裏庭の境界塀を取り払うと、裏庭は両棟を結ぶ中庭になり、L字型の北棟と南棟に分かれた大きなSOHO支援町家が出現したの だった。
部屋は京間の6畳とキッチンスペース2~3畳から成る結構広い空間だ。こうして活用してみると、素晴らしい空間になるのだが、学生アパートという発想で は、誰も入居したがらなかったのだ。
このアパートを再生するために、SOHO支援のオフィスにしませんかと大家に提案したところ、すぐにオーケーが出た。
ちょうど同じ頃に行政がらみでSOHO支援オフィスが立ち上がったが、それは莫大な改築費と行政の支援金をつぎ込んでいる。それに対して、ここ藤森寮は、 大家の負担金は0。町家倶楽部の活動費はボランティア。入居者が部屋の改築から共同スペースの改築費用を出すという条件にもかかわらず、テナント数の数倍 の応募があった。
同じような町家がたくさんあれば、全員に入居してもらいたかったのだが、断腸の思いで、選択を迫られた大家は、「困った困った、どうしよう」とうれしい悩 みを抱えることとなった。そうして、選ばれた8テナントは、ウェブ関係事務所2軒、輸入雑貨店、和装のお店、シュガークラフトのお店、パズル専門店、一閑 張りのお店、アートギャラリーなどだ。
次回からは、藤森寮のテナントの各個紹介を織りまぜて、話をしてみたいと思う。