西陣 町家よもやま暮らし

第一回

インターネットで町家探し


大学の頃から京都が好きで、ずっと町家暮らしに憧れていた。大学を卒業してからは同じ趣味を持つ漫画家の皇名月と西陣の町を歩きまわり、空き家らしき町家を見つけては「こんなとこに住んでみたいね~」などと言い合う日々を過ごしていた。でも、偶然見つけた空き家の大家さんの所在なんて分かろうはずもなく、また私たちには、それを探すだけの根気も才覚もなかった。憧れは、ついに憧れのままで終わるかに思えた。
 しかし、そんな時、皇さんから、インターネットで町家のお見合いをやっているというメールが送られてきたのだ。「町家のお見合い?」何のことか分からぬ まま、ホームページにあった西陣の町家倶楽部という所に出かけていくと、真っ先に「町家見学みたいな、軽い気持ちで来られちゃ困るんですよ。本気で町家に住む覚悟のある人だけを大家さんに紹介してるんだから」と釘を刺されてしまった。


別にいい加減な気持ちだったわけじゃないけど、そこまで確固たる信念があったわけではない。それでも「もちろん本気です!」と言うと、二日後、町家倶楽部から「借り手を探している町家に案内する」という電話があった。玄関横の格子窓。通 り庭と吹き抜けの天井。むきだしの太い梁と天窓。ぐるりと縁側をめぐらした坪庭。案内された町家を一目見るなり、イマイチ現実感のなかった町家暮らしが、私の中で熱い渇望に変わった。「ここ、貸して下さい!」次の瞬間、私は、そう叫んでいた。



西陣で。今秋、川合さんの町家暮らしが始まった。日常の中の発見、感じたこと。そんな日々の暮らしの風景を、季節感を織り交ぜながら綴ってもらう。皇さんの絵とともに。

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